判例編11:生命保険の特別受益
状況
太郎さんが亡くなり、一郎さんと次郎さんが相続人ですが、太郎さんは次郎さんに生命保険金が支払われるように契約しており、実際、次郎さんは生命保険金を受け取りました。
太郎さんには他にも預金や不動産などの財産があり、一郎さんは次郎さんと遺産分割協議をすることになりました。
一郎さんは、次郎さんに受け取った生命保険金も遺産分割をする際に財産の総額に入れて話し合うべきだと主張しました。
いわゆる特別受益の持戻しというものです。
次郎さんは、生命保険金は相続の対象ではないので、遺産分割で話し合う必要はないとの主張で裁判となりました。
特別受益というのは、相続人が、被相続人から遺贈や婚姻の際の持参金、住宅資金を援助してもらったなど特別の利益を受けていたということです。
特別受益の持戻しは、その特別の利益は不公平なので、遺産分割の際に、他の相続財産と合わせて検討しましょう、という制度です。
ただ実際には持戻しをするかどうかは通常、相続人の皆さんの話し合いで決めることが多いようです。
調停や裁判になった場合には持戻しをすることが多いのではないでしょうか。また被相続人が遺言などで、持戻しを免除し、遺産分割の対象から外すということもできます。
裁判所は、生命保険金は原則、相続財産ではないので遺産分割の対象とならず、特別受益の対象にもならないとしました。
しかし、あまりにも保険金が高額など不公平な場合には特別受益であり持戻しの対象になることもあるとしました。
どの程度が不公平かという判断は、保険金の額、保険金と遺産総額の比率、同居の有無、被相続人への介護の度合い、被相続人と相続人または相続人間の関係性、各相続人の生活実態などを総合的に考慮するということです。
最近は贈与税の非課税の特例により、生前に住宅資金を援助してもらうことも増えたと思いますが、贈与を受けていない他の相続人からしたら不公平になることもありますので、贈与の際にも後々の相続のことを考慮しておかなければなりませんね。
生前に贈与する際や、相続人の中に特別受益を受けた人がいる場合の遺産分割で注意するべきことなど気になることがありましたら、遠慮なく当事務所へご相談くださいませ。
今回の参照判例:最2決平成16年10月29日民集58巻7号1979号
今回の事例に関する当事務所のサービス
相続・遺言の無料相談実施中!
相続手続きや遺言書作成、成年後見など相続に関わるご相談は当事務所にお任せ下さい。
当事務所の司法書士が親切丁寧にご相談に対応させていただきますので、まずは無料相談をご利用ください。
予約受付専用ダイヤルは 097-538-1418 になります。
お気軽にご相談ください。
- 判例編1:相続人が押印した遺言書と相続欠格!?【司法書士が徹底解説!】
- 判例編2:遺言書を破棄・隠匿したら相続欠格になるか
- 判例編3:夫が亡くなり親族と姻族関係を終了したが、祭祀を引き継げるのか?
- 判例編4:占有は相続できるのか?【司法書士が徹底解説!】
- 判例編5:慰謝料の相続
- 判例編6:生命保険と相続
- 判例編7:賃料の相続【遺産分割について司法書士が徹底解説!】
- 判例編8:現金の相続【遺産分割協議について司法書士が徹底解説!】
- 相続財産調査】銀行への取引履歴の開示請求/不動産・預金の調べ方
- 判例編10:婚外子の相続分
- 判例編11:生命保険の特別受益
- 判例編12:相続放棄の熟慮期間の起算点
- 判例編13:成年後見人が特別縁故者になれるのか?【相続のキホンを徹底解説!】
- 判例編14:認知症と遺言
- 判例編15:添え手遺言
- 判例編16:自筆証書遺言の印鑑
- 判例編17:公正証書遺言が無効になる場合を【司法書士が解説】
- 判例編18:共同遺言