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判例編10:婚外子の相続分

状況

太郎さんは妻花子さんとの間に一郎さんと次郎さんという2人の子供がいましたが、もう1人愛人の正子さんとの間にも良子さんという子供がいました。

良子さんは婚外子つまり法律上非嫡出子であるわけです。
花子さんは太郎さんより先に亡くなっています。

太郎さんは亡くなり、相続手続きをする際、一郎さん次郎さんは法定相続分で分けようという話になり、良子さんにも法定相続分である5分の1をわけようとしました。

平成25年9月5日までの民法には900条に同順位の相続人がある場合の規定の1つとして、その4号に

「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出であるこの相続分の2分の1とし、・・・・」

という但し書きの規定がありました。

 つまり、良子さんは一郎さん次郎さんの法定相続分の半分しかない、という規定で、良子さんを1とすると一郎さんが2、次郎さんが2となり、良子・一郎・次郎=1・2・2ということで、良子さんの法定相続分は5分の1、一郎さん次郎さんはそれぞれ5分の2という結果になるわけです。

 ところが良子さんは、同じ子供なのに婚外子だからといって法定相続分が異なるのは憲法の平等の規定に反すると主張し、一郎さん次郎さんと同じ法定相続分を持っているはずだと裁判をしました。

 裁判所は、日本のこれまでの家族制度や時代背景、立法経緯を考慮しつつも、父母が婚姻関係になかったという、子にとって自ら選択ないし修正の余地のない事柄を理由として不利益を及ぼすことは許されないとし、良子さんの言い分を認めました。

 裁判でも長年これは問題となっており、なかなか良子さんのような主張が認められませんでしたが、平成25年になってやっと良子さんの言い分が通り、民法の改正へとつながりました。

よって先述の民法900条の4号但し書きの規定は削除されました。
(この判例にはもっと色々と細かい理由付けがされておりご紹介したいところですが、割愛させていただき、わかりやすい部分のみの解説にさせていただきました。)

家族という古い制度の価値観ではなく子供の立場を考慮したという意味では画期的な判例ではないでしょうか。

実際、当事務所のお客様で婚外子がいる相続手続きは、全体の1割もないと思いますが、改正前は、相続人同志の面識があったとしても、この規定があることで婚外子の方はやはり不平等感があったのではないでしょうか。

今はそれによる不平等はなくなりましたが、それでも婚外子がいる相続は相続人同士お互い慎重になるケースが多いようです。

当事務所ではそのようなケースでもしっかり対応させていただいておりますので、遠慮なくご相談くださいませ。

今回の参照判例:最大決平成25年9月4日判時2197号10項

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