判例編4:占有は相続できるのか?【司法書士が徹底解説!】
相続の話がまとまっており、問題なく他の人と争うこともなく相続した財産を自分のものとして20年間占有し続ければ、その財産の名義が以前の名義人のままであっても、自分のものにできる。
これが「相続財産の時効取得」です。今回はこの「相続財産の時効取得」についての判例を見ていきましょう。
状況
正夫さんは太郎さんに家を貸していました。
太郎さんは部屋の1つを茂蔵さんに貸して、賃料をもらっていました。
太郎さんは亡くなり妻の花子さんがそのままその家に住んでいました。
花子さんは茂蔵さんから賃料をもらいながら、自分も正夫さんに賃料を支払っていました。
あるとき花子さんは、善意無過失で10年間自ら占有したとして、
その家は自分のものであると時効取得を主張したのです。
さて花子さんの占有と時効取得は認められるのでしょうか?
結果
裁判所は、花子さんの占有を認めました。
民法185条に「新たな権限により更に所有の意思を持って占有を始めた」に当たるとしました。
「新たな権限」というのは今回でいう太郎さんの相続のことで、相続によりその相続人は占有を開始したと主張できる、ということになります。
ただし今回の場合、時効取得は認めませんでした。
それは花子さんが正夫さんに賃料を払っていたからです。
そりゃそうですよね、自分のものだったら賃料払う必要ありませんものね。
今回の判例は、「相続人は相続により占有を開始することができる」という点がポイントになります。
花子さんが賃料を払わず、正夫さんもそれを黙認して10年経過したのであれば時効取得で花子さんのものになる可能性もあったわけです。
ちなみに賃借権は相続できますので、花子さんは太郎さんの賃借権を相続しており、太郎さんが亡くなったからといって正夫さんは花子さんを追い出すことは原則としてはできません。
ですので、大家さんから借主が亡くなったから出て行けと言われても出る必要はありません。
山奥の管理しきれない土地などは、いつの間にか時効取得されているかもしれませんので、注意が必要ですね。
賃貸借の契約当事者が亡くなったような場合にもご注意ください。
当事務所でも時効取得の裁判の相談がよくあります。
不動産の管理はしっかりしておきたいものですね。
もし、「時効取得したい・時効取得されそう」という相談がありましたら遠慮なくお問合せください。
※今回の参照判例:最3判昭和46年11月30日民集25巻8号1437項
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※3不動産の評価額により、料金に変更が生ずる場合がございます。
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※6預金口座名義変更は2口座までの金額になります。以降1口座追加につき22,000円(税込)頂戴致します。
※7相続人が多数の場合、相続人に面識のない方がいる場合、海外在住の相続人がいる場合などの、複雑な案件になる場合は、難度に応じて報酬は加算されます。見積もりの段階で、詳しく説明いたします。
不動産の相続手続きでよくあるご質問
相続手続きにはどんな種類がありますか?
相続手続きは、必ず実施するものと必要に応じて実施するものに大別されます。
必ず実施するものは、「相続人調査」「相続財産調査」「遺言の有無の調査」「遺産分割協議」「相続財産の名義変更」「遺産分割協議書及び遺言の内容に従って相続財産の分配」があげられます。
これらの手続きは、どんなパターンの相続手続きにも実施が必要な内容です。
た、必要に応じて実施するものには「相続放棄・限定承認」「故人の所得税の準確定申告」「遺言の検認」「相続税申告」があげられます。
正直言って面倒なのですが、相続した不動産の名義変更手続き(相続登記)は必ずやるべきでしょうか?
相続した不動産の名義変更は必ず実施すべきでしょう。
故人が不動産(家屋、土地、収益不動産など)を所有していた場合、その不動産は死後には相続人全員で共有していることになります(共有名義不動産)。
これは、「その不動産を相続人みんなのもの」として取り扱われることになり、例えば空き家になったから売却しようと思っても、不動産を共有している全ての相続人の同意を得ないと売却することができなくなります。
さらに、共有状態のまま次の相続が発生する(つまり相続人のうちの誰かが亡くなる)と、共有の範囲がその故人の相続人にどんどん広がり余計に相続した不動産の譲渡や処分などの手続きが困難になっていきますので、必ず相続した不動産は名義変更(相続登記)を実施しましょう。
相続した不動産の名義変更(相続登記)に期限はありますか?
2024年度から相続登記が義務化される見通しです!相続登記の義務化に伴う改正ポイントは下記の通りです。
・相続で不動産取得を知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をしないと10万円以下の過料の対象となる
・遺産分割後の名義変更登記も義務化される
・遺産分割がまとまらず相続登記をできない場合、相続人であることを申告すれば相続登記をする義務は免れる。
その場合には、法務局(登記官)が登記簿に申告をした者の氏名住所などを記録する(相続人申告登記(仮称))。
・相続人に対する遺贈や法定相続登記後の遺産分割による名義変更が簡略化され、不動産を取得した者からの申請で名義変更ができる。
・住民基本台帳ネットワークシステムで、法務局(登記官)が登記簿上の所有者が死亡していること把握した場合には、所有者が死亡していることを登記簿に記録することができる
ですが、上記の項目でも説明した通り名義変更を実施しないと、以降の不動産の譲渡や処分を実施することに支障をきたす可能性が高いため早めの手続きを実施することをおすすめいたします。
相続登記の義務化について、詳細は下記よりご覧ください。
相続手続きを放置していると大変なことになります。詳しくはこちら>>
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