判例編12:相続放棄の熟慮期間の起算点
太郎さんは生活保護を受けていましたが亡くなりました。
相続人の一郎さんは、太郎さんに財産はないと思い相続の手続きをしていなかったところ、死亡から約1年後、太郎さんに借金があることが判明し、債権者から裁判されてしまいました。
一郎さんは相続放棄の手続きをしましたが、果たして認められるでしょうか。
相続放棄は、民法915条に「相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続について単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない」とあり、素直に読めば亡くなったのを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に相続放棄の手続きが必要だと思われます。
裁判所は熟慮期間を原則として、相続人が相続開始の原因たる事実およびこれにより自己が法律上相続人になった事実を知ったときから起算するべき、だとしました。
ただし、その事実を知ったとしても熟慮期間の3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄しなかった理由として、被相続人に全く財産がないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活暦、被相続人と相続人の間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し、
相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人においてそう信じる相当な理由があると認められるときには、相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識したとき、または通常これを認識することができるときから起算するべきだ、と判断しました。
本件事例の場合、一郎さんは太郎さんが亡くなったことをその日に知っていましたが、借金があることが分かったのは約1年後であり、熟慮期間の開始も借金があったときからでよい、ということになり、それから3ヶ月以内に相続放棄の申立をしたため認められたということです。
熟慮期間の起算点はケースバイケースですが、似たようなケースでも裁判所によっても判断が異なる場合もあり、やってみないと分からないということもよくあります。
当事務所でもこれは無理だろうと思ってダメもとで申請してみたものが、認められたことも多々あります。
少々緩やかな判断がされているように感じもしますが、明らかに相続放棄の手続きを怠っていたというような場合には困難だと思います。
相続放棄の申立も1日や2日でできるとは限りません。
必要書類を揃える時間なども必要ですので、相続が発生した時点で速やかに財産調査と相続をするのか相続放棄をするのかの選択をする必要があるのではないでしょうか。
当事務所では相続放棄の手続きもこれまで沢山お手伝いさせていただいております。相続放棄をしようかお悩みの方、すぐにでも相続放棄したい方、もしかして熟慮期間を過ぎたかもしれないけど相続放棄したい方、できる限りのお手伝いをいたしますので、どうぞ遠慮なくご相談くださいませ。
今回の事例に関する当事務所のサービス
「相続放棄」の言葉の意味は文字どおり、「相続権を放棄する」というものです。
相続・遺言の無料相談実施中!
相続手続きや遺言書作成、成年後見など相続に関わるご相談は当事務所にお任せ下さい。
当事務所の司法書士が親切丁寧にご相談に対応させていただきますので、まずは無料相談をご利用ください。
予約受付専用ダイヤルは 097-538-1418 になります。
お気軽にご相談ください。
- 判例編1:相続人が押印した遺言書と相続欠格!?【司法書士が徹底解説!】
- 判例編2:遺言書を破棄・隠匿したら相続欠格になるか
- 判例編3:夫が亡くなり親族と姻族関係を終了したが、祭祀を引き継げるのか?
- 判例編4:占有は相続できるのか?【司法書士が徹底解説!】
- 判例編5:慰謝料の相続
- 判例編6:生命保険と相続
- 判例編7:賃料の相続【遺産分割について司法書士が徹底解説!】
- 判例編8:現金の相続【遺産分割協議について司法書士が徹底解説!】
- 相続財産調査】銀行への取引履歴の開示請求/不動産・預金の調べ方
- 判例編10:婚外子の相続分
- 判例編11:生命保険の特別受益
- 判例編12:相続放棄の熟慮期間の起算点
- 判例編13:成年後見人が特別縁故者になれるのか?【相続のキホンを徹底解説!】
- 判例編14:認知症と遺言
- 判例編15:添え手遺言
- 判例編16:自筆証書遺言の印鑑
- 判例編17:公正証書遺言が無効になる場合を【司法書士が解説】
- 判例編18:共同遺言