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判例編15:添え手遺言

太郎さんは白内障による資力の衰えと、脳の障害による手の振るえから自力で字を書くことが難しい状態でしたが、妻の花子さんが添え手をして、自筆証書遺言を書き上げました。

しかし、遺言の内容に不満がある相続人の1人の一郎さんがその遺言は無効ではないかと裁判をしました。自筆証書遺言は、読んで字のごとく、自分で書かなければなりませんし、自分の意思で書く必要があります。

しかし太郎さんのように遺言の意思はあるものの、病気で上手く字が書けないため、妻花子さんに添え手をしてもらった場合、相続人にもなりうる花子さんの意思が介在してしまうのではないかという疑問も出てきて、そのような遺言は無効だと主張する相続人も当然いるでしょう。

裁判所は添え手遺言につき、要件を示しました。

1.遺言者が証書作成時に自書能力を有している。
2.他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけである。
3.添え手がそのような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意志が介入した形跡のないこと。

このような場合には添え手遺言でも有効としました。

太郎さんの遺言も有効と判断されました。添え手をした花子さんは、太郎さんの背後から手の甲を上から握り、太郎さんは書こうとする字を1つ1つ声に出しながら、2人で手を動かして書き上げたとのことでした。

自筆証書は自分で書けるとは言え、要件を整えていなければならないし、自分の意思で書くものであり、また自分の意思で書いたという証明も難しいものです。
そのため自筆証書遺言は相続トラブルの種となるケースもときどきあります。

そのようなトラブルになりそうな場合には、できれば公正証書遺言の方がお勧めとなりますね。

当事務所でも遺言の書き方のアドバイスや公正証書遺言のための公証役場との調整などもさせていただいておりますので、遠慮なくご相談くださいませ。

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