判例編18:共同遺言
太郎さんは妻の花子さんと連名で自筆証書遺言を作成しました。
遺言には太郎さんが先に死亡した場合には、花子さんが全財産を相続し、さらに花子さんが死亡後の相続財産の分配方法を記載していました。
この遺言により財産をもらえなかった一郎さんが財産をもらえた二郎さんにこの遺言は共同遺言にあたり無効ではないかと訴えました。
共同遺言については民法975条に「遺言は二人以上の者が同一の証書ですることができない」と規定されています。
今回の遺言は、連名ではあるものの花子さんは自書しておらず、読み方によっては太郎さんの遺言と花子さんの遺言の内容は区別できます。
花子さんは自書していないので、花子さんの分だけ無効にすればよいのではないかという二郎さんの主張もあります。
裁判所は、「同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方に氏名を自書していない方式の違背があるときでも、その遺言は民法975条により禁止された共同遺言である」として、遺言全体を無効であると判断しました。
共同遺言をすると、遺言の自由や撤回の自由に影響がでること、一方の遺言に無効原因がある場合、他方の遺言にどう影響するのかなど、複雑な法律関係となることから、共同遺言は禁止されています。
また、亡くなる順番によっても遺言内容が変わってしまうこともありますので、禁止ということでしょう。
でも実際相談に来られるご夫婦で、共同遺言をしたいという方は結構いらっしゃいます。
共同遺言はできませんが、なるべくご希望に添えるように文案を検討することもあります。
また、夫婦二人とも遺言を作成しておき、一方が先に亡くなった時点で他方は再度遺言を検討するということも大事になってきます。
せっかく書いた遺言が無効になっては最後の意思表示が相続人に伝わりませんので、遺言は元気なうちにしっかり検討して作成することが重要です。
当事務所では、遺言作成のアドバイスや公正証書遺言のための公証役場との調整などのお手伝いをさせていただいておりますので、遠慮なくご相談くださいませ。
今回の参照判例:最2判昭和56年9月11日民集35巻6号1013項
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