判例編14:認知症と遺言
太郎さんは一郎さんの勧めで自筆証書遺言を書き、子供である一郎さんと次郎さんで財産を分けるように記載していました。
しかし、遺言作成当時、太郎さんはアルツハイマー病や脳梗塞などで認知症の症状がありました。
太郎さんが亡くなった後、一郎さんは遺言どおりに手続きをしようと思いましたが、次郎さんがその遺言は無効ではないかと主張し裁判を提起しました。
遺言は15歳以上で意思能力があればよく、認知症だから絶対に効力がないとは言えません。
認知症と言えども、日によって調子が良いとき悪いときがありますし、遺言が被相続人の最後の意思表示であること、効力自体は死後に発生することなどから、認知症であっても遺言が有効な場合もあります。
しかし、遺言のなかで財産の処分を内容とすることも多く、その場合には意思能力も重要視される傾向にあります。
今回の太郎さんの遺言は、一郎さんの勧めで書きましたが、一郎さんが内容を考え促しながら書いたと考えられ、また太郎さんの認知症も重症であったこともあり、遺言を書く能力はなかったと裁判所は判断しました。
遺言を書く意思能力としては、遺言の内容や整合性、動機の合理性、他者の影響、体裁なども考慮して判断されるとしました。
ちなみに認知症で成年後見制度を活用している場合には、被後見人が遺言をする際に医師2人以上の立会が必要とされており、医師によって意思能力も確認されるのではないかと思います。
認知症の方に遺言を書いてもらう場合には、その日の健康状態、意思疎通の有無などに注意しながら、遺言内容も簡便にしておき、できれば医師の診断書などと合わせて証拠となるようなものを残しておいた方がよいのではないでしょうか。
公正証書遺言の場合、遺言者が高齢者であったり認知症の疑いがあるような場合には、公証役場にもよりますが医師の診断書が必要なこともあります。
遺言を書く場合、または親族に書いてもらおうと考えている場合、特に高齢者や認知症の疑いがあるのであれば、特に慎重になる必要がありますね。
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今回の参照判例:東京高判平成21年8月6日判タ1320号228項
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