親亡き後の「家」どうする?「売却したほうがいい」相続不動産
親が亡くなり住んでいた家を相続したものの、離れている場所にあったり、自分はすでに家をもっているので利用する予定がなかったりと、今後の活用方法で悩んでしまうことがあります。
思い出がある実家であり、「売ってしまうのは寂しい気がする」「そのうち利用することがあるかも知れない」とそのまま放置してしまう方もいます。
しかし、家は保有するだけでデメリットが発生することもあるので注意しましょう。
今回は、相続した不動産を「売却したほうがいい」ケース、早めに売却することで生じるメリットについて解説します。
相続した不動産を売却したほうがいいケースとは
不動産は保有しているだけでコストがかかり、場合によってはリスクが発生することがあります。
保有して活用するメリットと保有コストやリスクとを比較してどうするかを決めることになるのですが、以下の場合には売却することをおすすめします。
- 活用する予定がない場合
- 遺産分割協議が難しい場合
活用する予定がない場合
自分で活用する予定がなければ売却した方がよいでしょう。
活用しない不動産を保有していると発生するデメリットがあるからです。
活用しない不動産を保有するデメリット
- 建物が老朽化・荒廃する
- 維持管理の手間がかかる
- 資産価値が下落する
- 固定資産税などの維持費が発生する
これらのデメリットについて後から詳しく解説します。
遺産分割協議が難しい場合
現金であれば相続人の人数で割ればよいので遺産分割は簡単にすみますが、不動産の場合は簡単に分割できません。
土地を分割しようにもきれいな整形地に分割するのは難しく、相続した土地の形状によっては分筆することで旗竿地や道路がない土地になってしまうこともあります。
そもそも建物の場合は分割するために切り取ることもできません。
このように、相続財産に不動産が多くて遺産分割が難しいときには不動産を売却して現金化するのが現実的な解決策ということになります。
また、相続人同士で話し合いがうまく進まないため遺産分割協議をするのが難しい場合にも早期に売却して現金化し、分割をすませておくことをおすすめします。
相続人複数が共同して相続することもできますが、共有している不動産の処分には全員の同意が必要になるのでリフォームが必要な時や売却したいときでも全員の意見がそろわないため何もできずに塩漬けになってしまうこともあるからです。
さらに、親が亡くなった後に遺産分割協議をしないでそのままにしておけば、いずれは次の相続が開始します。
相続問題を先送りにしていれば子供など次の世代に問題を引き継がせてしまうことになります。
また相続が何代も発生すれば相続人の数も増えてしまい、お互い見たこともない人同士が相続人になることから、ますます問題は複雑化し話し合いがまったくできなくなってしまうこともあるので注意が必要です。
活用できない不動産を保有するデメリット
ここでは、活用できない不動産を保有していることで生じるデメリットについて解説します。
建物が老朽化・荒廃する
適度に管理されていない建物は老朽化がすすんでしまい、害虫・害獣が住みついたり、ゴミを不法投棄されたり、放火や不法侵入されたりするなど荒廃が進んでしまいます。
景観の悪化や悪臭が発生、害虫・害獣の活動などから周辺環境の悪化を招いたとして近隣住民から苦情がくるようになり、トラブルのもとになってしまうこともあります。
老朽化がすすめば建物や塀が倒壊して通行している方に被害を及ぼすことも考えられます。
また庭木が越境してしまって隣地に迷惑をかけることもあるでしょう。
維持管理の手間がかかる
建物の老朽化や荒廃を防ぐためには所有者がきちんと維持管理をしなければなりません。
月に1回程度は換気や清掃のために相続した空き家を訪問するのが望ましいのですが、遠方であったり仕事で忙しかったりすれば維持管理もおろそかになりがちです。
誰かに委託して維持管理をすることもできますが、維持管理を委託する費用が必要になってしまいます。
資産価値が下落
建物は建築後の年数がたつほど価値は下がるのが通常です。
土地の価格の影響がでにくいのでマンションの例をみてみましょう。
下記の表はREINSで公表している2022年1月~3月までの成約状況報告から東京都のマンションの㎡単価を抜き出したものです。
下の表から、築年数26~30年のマンションの㎡単価は、築年数5年以内のものと比較して半分ほどの価値になってしまっているのが分かります。
築年数 | ~5年 | ~10年 | ~15年 | ~20年 | ~25年 | ~30年 |
㎡単価(万円) | 121.7 | 109.0 | 98.1 | 86.6 | 77.5 | 62.4 |
下落率(%) | – | 89.5 | 80.6 | 71.1 | 63.6 | 51.2 |
首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況 【2022年01~03月】
資産価値が下落するのは築年数の経過だけではありません。
不動産の価格は他の物価と同じく、需要と供給のバランスで決定されるため、人口減少が進んでいる地域だと需要が減ることから売却価格の下落は一層激しいと予測されます。
固定資産税などの維持費が発生
不動産は保有しているだけで税金などの維持費がかかります。
固定資産税や都市計画税、建物には火災保険料がかかりますし、マンションでは修繕積立金や管理費が発生します。
また、建物の老朽化が進んだり荒廃が進んだりしてしまうと自治体が「特定空き家」に指定することもあります。
特定空き家に指定されれば固定資産税や都市計画税の優遇処置(*1)が受けられなくなるので、税金の負担は重くなってしまいます。
* 1:建物があることで、小規模宅地(200㎡以下)では固定資産税が1/6、都市計画税は1/3に軽減されるなど一定の軽減措置が適用されます。
また、災害などによって建物の修繕などが必要になれば不意の費用がかかってしまうでしょう。
早めに売却するメリット
相続した不動産を売却すれば前記のデメリットがなくなるうえにメリットもあります。
遺産分割ができる
相続した不動産を売却して現金化すれば遺産分割が簡単になります。
売却するには相続登記をすることが必要です。
相続人が複数の場合共有で相続した後に売却する方法と、単独名義で相続して売却して得た代金を分割する方法があります。
単独名義で相続して売却代金を分割する方法では、相続人として名義がのらない方も代金を受け取るので贈与税がかからないように注意しましょう。
具体的には、遺産分割協議書にきちんと次の事項を記載しておくことが必要です。
- ➀換価分割のために単独名義にすること
- ➁分割協議によって決められた売却代金の分割割合
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税金の特例を受けられる
相続した不動産を売却した時には以下の税金の特例が利用できるので節税になることがあります。
- ➀相続財産譲渡時の取得費加算の特例
- ➁居住用不動産の3,000万円特別控除
- ➂相続空き家の3,000万円特別控除
相続財産譲渡時の取得費加算の特例
相続または遺贈によって取得した不動産を売却したときに利益がでれば譲渡所得税がかかります。
このとき、相続税を払っていれば一定金額を取得費に加算できる特例です。
この特例は「相続空き家の3,000万円特別控除」と併用ができないので有利な方を選択しましょう。
居住用不動産の3,000万円特別控除
亡くなった方と同居していた相続人が建物を相続して売却するときには、居住用不動産の特別控除が利用できる可能性があります。
住まなくなってから3年という期限があるので注意しましょう。
相続空き家の3,000万円特別控除
一定の場合には、親が住んでいて亡くなったために相続した家に誰も住んでいなかったときでも相続空き家の3,000万円特別控除が利用できます。
この制度はマンションには適用されないので注意しましょう。
また、「区分所有の登記がされていない建物」であるため二世帯住宅にも適用されません。
なお亡くなる前に親が老人ホームで暮らしていた場合でも適用されるケースがあるので適用されないか確認しましょう。
まとめ
幼いころに暮らしていた実家なら思い出もあり売却に向けて考えるのはつらいときもありますが、保有しているだけで生じる負担も多くあり売却するメリットもあることから、相続したものの活用する予定がない不動産は売却も一つの方法として検討してみましょう。
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