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【泥沼遺産相続】遺産承継で揉める「5つ」のケースを相続専門司法書士が徹底解説

遺産相続は兄弟姉妹など近い関係での話し合いになるためなるべくなら円満に解決したいものですが、お互いに利害がからんで泥沼化してしまうこともあります。

遺産分割協議でもめてしまうと近い関係だけに後々までしこりを残してしまうことになりかねません。

なにより、亡くなった方をしのんで、できるだけスムーズに財産の承継をしたいものです。

今回は残念ながら遺産相続の話し合いがまとまりにくくなりやすいケースについて「やってはいけない泥沼相続」と題して解説します。

相続の話し合いが泥沼化しやすい5つのケース

次の5つのケースで遺産承継の話し合いが難しくなり泥沼化してしまうことがよくあります。

①遺言書に問題があるケース

②相続財産が不動産のみのケース

③生前贈与が行われていたケース

④被相続人を介護した相続人が寄与分を主張したケース

⑤相続人の家族が遺産分割に口を出すケース

①遺言書に問題があるケース

せっかく遺言書を残していても遺言書が原因になって遺産相続が泥沼化してしまうことがあります。

遺言書を残すなら相続人同士がもめないように注意して作成しておきましょう。

遺言の種類

遺言書にはいろいろな種類がありますが、一般的に利用されるのは自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類です。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は自分だけで作成できるので、自分の都合に合わせて思うように作成できるのがメリットです。

しかし自筆証書遺言では様式が定められているので、定められた様式にのっとっていなければ無効になって利用できません

また自分の思いで作成してしまっているので習慣や省略があるために相続登記や預貯金の相続に利用できないことが見受けられます。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が作成してくれるので法的に問題がない遺言書を作成できるのがメリットです。

公証人や遺言書作成時の証人に支払う費用が発生するのがデメリットと言えるでしょう。

遺言書が問題になる場面とは?

遺言書が残されていても問題になる具体的な場面を紹介します。

✔ 自筆証書遺言が残されていたが、遺言書の内容があいまいで相続登記や預貯金の払い出しができない、せっかく残された遺言書が利用できないことがある

✔ 自筆証書遺言を残しておくと言われていたが、遺言書がどこにあるかがわからない

✔ 自筆証書遺言があるのはわかっているが、相続人の一人が遺言書をかくしてしまったり、破いてしまったりすることがある

✔ 自筆証書遺言がみつかったが、遺言書が書き換えられていると他の相続人から異議がでることがある

✔ 自筆証書遺言があったが、作成時期からすると遺言者は認知症がすすんでいて遺言が有効に残せない状態だった可能性が高い

自筆証書遺言があったが預貯金を払いだそうとしたところ、遺言執行者が選任されていないので他の相続人の書類が必要だといわれたものの相続できない他の相続人の協力が得られず手続を進められないことがある

✔ 遺言書による相続分の指定だと遺留分を侵害していると他の相続人から異議がでることがある

※遺留分:遺言によっても侵害されない一定の相続人に最低限保証された相続財産に対する割合

遺言書での紛争を避ける工夫は3つ!

遺言書がもとになる紛争を防ぐためには、遺言書の内容を明確にして、紛失や破棄、変造を防ぐことが必要です。

遺言書での紛争を避ける方法としては、次の3つがあります。

①法務局の自筆証書遺言保管制度を利用する

自筆証書遺言では、紛失、破棄、変造などのおそれがあります。

法務局で自筆証書遺言の保管をしてくれるので、法務局で保管してもらえば上記の問題を避けることができます。

ただし、法務局に預けるときに法務局では遺言書の内容の審査をしないので、遺言書が無効であったり、あいまいな内容だったりすると遺言書が利用できないことがあるので注意が必要です。

②公正証書遺言にする

公正証書遺言では、公証人が作成した遺言書の原本を保管するので紛失などがおきるおそれはなく、遺言書の内容についても法的に問題がないかをチェックして作成してくれるので遺言書が利用できないことはありません。

③遺留分に配慮する

しかし、遺留分については相続人から異議がでるおそれがあります。

相続人全員に公平に分け与える十分な資産があれば遺留分を侵害しないように相続財産の指定をすることが可能ですが必ずしも十分な資産があるとは限りません。

できるだけ生前に相続人に対して遺言者の気持ちを打ち明けて相続人に納得してもらっておくとよいでしょう。

②生前贈与が行われていたケース

亡くなった方から生前に贈与された財産は亡くなった方の財産ではないので原則として遺産分割の対象にはなりません。

しかし、理屈ではそうであっても生前に多くの財産を贈与されていたり、アパートなどの収益物件を贈与されていたりすると他の相続人が不公平に感じて遺産分割協議がスムーズに進まないことがあります。

特別受益の相続財産持ち戻し

このような不公平感をなくすために、相続人が亡くなった方から生前贈与や遺贈によって特別の利益を得ているときには、利益を得た生前贈与などの額をいったん相続財産として計算して相続人の相続分を計算することになります。

遺留分侵害請求

なお、以下の場合は遺留分侵害請求の対象となるので注意が必要です。

亡くなる前1年間に行った贈与
贈与した方と受けた方の双方が遺留分を侵害することを知っていて行った贈与は期間制限がなくなる
(贈与を受けた方が相続人ではない場合も含みます)
相続人に対する以下の贈与(特別受益)は10年間相続財産として計算する
 ・婚姻または養子縁組のための費用
 ・生計の資本としてされた贈与

また、特別受益については亡くなった方が相続財産とみなさないように遺言書などで意思表示することも可能ですが、遺留分侵害請求をするときにはこの意思表示があっても相続財産に加算して計算することができます。

※遺留分侵害請求:侵害された遺留分に相当する価格の弁償を請求できる権利のこと。令和元年の民法改正によって「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害請求」と名前が変わり請求できる権利の内容が変わりました。侵害請求では価格弁償となります。

③相続財産が不動産のみのケース

残された財産が不動産だけだと、不動産は分割することが難しいので遺産分割協議がまとまりにくくなります。

土地を相続人3人で分割して相続するためには土地を分筆しなければなりません。

分筆によって不整形の土地ができたり道路に面していなかったりすれば価値のない土地になってしまいます。

さらに分筆するためには測量費用や分筆登記費用がかかります。

また、一戸建ての建物だとそもそも3つに分けることもできません。

「共有」で相続すると管理や処分が難しくなるので要注意

遺産分割協議がまとまらない場合には、法定相続分どおりに共有名義で相続することになります。

遺産分割協議がまとまらないまま法定相続分どおりに共有名義で相続すると、その後の管理や処分に困ることがあります。

共有物の管理は原則として過半数の同意が必要ですし、変更や処分行為となると共有者全員の同意が必要になります。

相続した家屋が老朽化してきたためにリフォームをしたいと思っても他の相続人全員の同意がなければリフォームも思い通りできず、売却するにしても相続人全員の同意がなければ売却することができません。

このように不動産を共有名義で相続すると後々まで問題を長引かせてしまうことになりかねません。

遺産が不動産だけの場合にトラブルを避ける工夫

相続人に十分な資産があれば相続人のうちの一人が相続して他の相続人には相続分に対応する対価を支払うことで遺産分割協議をまとめることができます。

なお、この対価には贈与税はかかりません。

また、相続登記は一人の名義で行うものの売却して売却代金を分割する内容の遺産分割協議をすることもできます。

こちらの方法でも贈与税がかからずに行うことが可能ですが、遺産分割協議書にきちんと明記しておかなければ税務署とのトラブルになることがあるので注意しましょう。

④被相続人を介護した相続人が寄与分を主張したケース

亡くなった方の財産を守ったり増やしたりする特別な貢献をした方は寄与分を請求することができ、法定相続分の割合よりも多くの財産を相続することができます。

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度のことです。

寄与分請求は遺産分割協議ではまとまりにくい

法律的には、このように寄与分が認められているとはいえ、他の相続人からすれば「自分の取り分が減ってしまう」「実際の寄与の額がみえない」などとして素直に寄与分を認めて遺産分割をすることは少ないといえるでしょう。

この場合調停などによって寄与分を判断してもらうことになりますが、「特別の寄与」をしたかが、争いになるケースがあります。

亡くなった方の世話をしてきたと自負があればより多くの財産を承継したいと思うのは通常の気持ちだといえるものの、世話をしてきたことが「特別な」行為だったのか、財産を維持あるいは増加させたのかが、争点になります。

基本的には、以下の点が重要になります。

  • ・無償
  • ・継続
  • ・専従
  • 寄与分と遺留分侵害請求との関係

寄与分によって遺留分を侵害されている他の相続人がいる場合に、遺留分侵害請求を寄与分権者(寄与分を主張している人)に対してできるのかが問題ですが、遺留分侵害請求の対象は遺贈または贈与とされているため寄与分は対象外といえるでしょう。

⑤相続人の家族が遺産分割に口を出すケース

遺産分割協議はあくまでも相続人同士の話し合いです。

その場に配偶者など相続人以外の方が入ってしまうと遺産分割協議もうまくいかず話し合いは泥沼化してしまうでしょう。

特にお金や法律に詳しいからと「自分が中立な立場でアドバイスしてあげよう」と手をあげてしまうと問題が複雑になってしまいます。

相続人同士だと「情」によってまとまるところが「法」や「権利」の主張によって正当性が主張されてしまうと落としどころを探すのが難しくなってしまいます。

遺産分割協議は相続人同士の話し合い

いくら自分は中立な立場だと思っていても他の相続人はなかなかそう思ってはくれません。

「相続人でもないのに話に割り込んで」と反感をかってしまいがちです。

「遺産分割協議は相続人同士にまかせる」のが遺産分割協議をスムーズにすすめる秘訣です。

まとめ

遺言書を残すときには問題がない遺言書を作成して相続人とも十分に話し合っておき、亡くなった後も相続人同士がもめないように心がけておきたいものです。

遺産分割協議は相続人同士の話し合いなので、一度もめてしまうと後々まで影響してしまいます。

遺産分割協議がもとで疎遠になってしまうことにもなりかねません。

相続人同士でそれぞれの事情があるものの、冷静に協議に参加しましょう。

なにより相続人は主張すべきことは主張するものの円満に遺産分割協議をすすめていくことを心がけておきましょう。

遺産分割協議の内容がまとまってきたら口約束だけでなく、必ず文書に残しておくことも大事です。

法的に問題がない自筆証書遺言を作成したり、遺産分割協議書を作成したりするには専門的な知識が必要です。

遺産相続が泥沼化してしまうおそれがあるときや、泥沼化してしまった相続問題の整理をしたいときには当事務所にお気軽にご相談ください。

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