【解説】株式の相続手続きで確認するべきポイントとは?
被相続人(亡くなった人)が投資好きだった場合、多種多様な株式が相続財産として残されている可能性があります。
相続財産に株式が含まれている場合、どのような手続きが必要なのか、株式の相続手続きを進める上でのポイントを以下で説明致します。
株の相続はどうすれば良いのか分からない・・・
故人が株や投資信託などを所有されているとき、これらはすべて相続財産に含まれます。
故人名義の口座のままでは、売買や換金などができませんので、相続人の証券口座へ、故人保有の株券等を移管します。
相続人の証券口座を開設
相続人が証券口座を持っていないときは、相続手続きをするためだけに、新しく証券口座を開設しなければなりません。
すでにご自身の口座をお持ちのときは、その口座へ、故人保有の株券等を移管します。
株式の相続手続きで確認すべきこと
証券会社の資料がお手元にありますか?
定期的に届く配当金等のお知らせや取引残高報告書、ネット系証券会社の場合は口座開設の際の資料等が必要です。
遺言書はありますか?
ない場合は相続人の間で遺産分割協議をする必要があります。
相続手続きのための戸籍はすべて揃っていますか?
相続手続きに必要な戸籍は、第三順位相続人の兄弟姉妹間の手続になると範囲が膨大になる場合がございます。
自身で取得することが大変な時は専門家に任せるのも一つの手です。
相続放棄を検討していますか?
相続放棄をする場合は被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申出をする必要があります。
相続税の基礎控除額を超えるか確認はお済ですか?
相続税がかかる場合、分け方(遺産分割)によって支払う税金が変わることがございます。
すべての遺産の調査が済んでから手続きを始めてください。
株式(証券)の相続手続きについて
『お父さんは、〇〇証券で株の運用していたのは知っているけど、どのくらいの資産があるのかわからない。』
『遺言書もないし相続人間で遺産分割したいのだけれど、お父さんの残した株がどれぐらいあるのか全く知らないので話し合いが進まない。』
そんな方、結構多くいらっしゃいます。
通常株式の相続手続きをする際、まずは残高証明を取得し被相続人所有の株式がどのくらいあるかの調査をします。
遺言書がある場合は遺言書の内容のとおりに移管。遺言書がない場合は相続人の間で遺産分割協議をし、協議内容のとおりに移管をします。
通常証券会社の取り扱いとしては、遺産を相続する人の証券口座へ株式を移管することで株式の相続手続きが完了します。
まれに移管せずに株式を売却し現金化した上で受け取ることが可能な証券会社もあるので事前の調査が必要です。
株式を相続したらまずは「上場」「非上場」をチェック!
株式を相続したときには、まずその株式が東京証券取引所などの株式市場で売買されている「上場株式」なのか、親族の会社の株式のように株式市場での売買を予定されてない「非上場株式」なのかによって、とるべき対応が違います。
被相続人が、生前に「株をやっている」などと話していた場合は、その「株」とは上場株式であるのが通常です。
一方で非上場株式とは、証券取引所には公開されておらず、一般に流通していない株式になります。
非上場株式が問題になるのは、被相続人が会社を経営している場合や、親族や知人の会社に出資している場合などです。
非上場株式の場合、「○○の会社に出資している」といった言い方をするのが普通なので「株をやっている」と生前に被相続人が言っていた場合、ほとんどが上場株式と考えて間違いはないでしょう。
証券会社が判明しているかどうかで対処方法が変わります!
上場株式の相続の際には、株式を預けている証券会社が判明しているか判明していないかで対応が異なります。
証券会社が判明している場合
自宅に証券会社からの通知書や粗品などを見つけて問い合わせるなどして、証券会社が判明している場合、株式の遺産相続手続きは、以下のようにして進めます。
①証券会社に連絡を入れる
まずは株式を預けている証券会社へ連絡をして、名義人である被相続人が死亡したことを知らせます。そして、相続人に名義変更したい希望も伝えます。
②必要書類を揃える
相続人が株式の相続手続きを行うための必要書類を揃えます。
多くの証券会社では戸籍謄本、住民票や本人確認書類、遺産分割協議書、遺言書等が必要となります。
また、口座振替の申請書などを書かなければなりません。証券会社によって書式が異なるので、証券会社ごとに確認をしましょう。
③相続人の証券口座を用意する
株式を相続するときには、被相続人名義から相続人名義に書き換えた株式を相続人の証券口座に振り替えてもらう必要があります。
預金と違い、有価証券の場合には「口座そのものの名義変更」ができないので、必ず「相続人名義の証券口座」が必要です。
④相続人の口座へ被相続人の株式を振り替えてもらう
相続人名義名着の口座と必要書類が揃ったら、証券会社に申請書を提出しましょう。
被相続人名義の株式を相続人名義に変更した上で相続人名義の証券口座へと振り替えてもらえます。
その後は株式が相続人名義となるので、株主宛の通知などもすべて相続人宛に届くようになり、配当金も受け取ることができます。
証券会社がわからない場合
株式を預けている証券会社がわからない場合には「証券保管振替機構」に問い合わせると、どこの証券会社と取引があるのか開示してもらえます。
証券保管振替機構とは、証券を預かって管理している機関です。開示請求書に必要事項を記入して、必要書類とともに郵送すれば、取引情報が記載された資料を郵送してもらえます。
情報開示請求の際には、最低限以下の書類が必要です。
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開示請求書
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法定相続人の本人確認書類
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相続人の戸籍謄本 ※1
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被相続人の戸籍謄本等(原則として被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類が必要ですが、省略できるケースもありますので、証券保管振替機構に確認しましょう)※1
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被相続人の住所がわかる資料
株式の相続手続きの流れ
① 被相続人所有の証券会社の資料を集める。
(証券会社、支店等どこに株式があるかの参考資料となる。最近はネット系証券会社も多く取引残高報告書等が自宅に届かないこともあるので、被相続人が最初に口座開設した際の資料がないと相続手続き漏れとなる場合があるのでご注意下さい。)
② 相続手続きに必要な戸籍等の公的書類を取得する
③ 残高証明書を取得する(上記①の資料で複数の証券会社の書類が見つかった場合はそれぞれに残高証明書を請求する)
④ 遺産分割協議をし、誰が相続するのか決める(遺言書がある場合は不要)
⑤ 相続する人の証券口座を作成する(既に持っている場合は不要。ただし被相続人と同じ証券会社での口座が必要)
⑥ 被相続人口座から相続人口座に株式を移管する
※移管後に株式を売却し売却益が発生した場合は確定申告が必要なことがあります。
証券会社の相続手続きで必要になる書類等
〇証券会社を特定するための資料
〇戸籍等一式(下記参照)もしくは法定相続情報
〇印鑑証明書(期限あり。6ヵ月以内のものという条件の会社が多い)
〇遺言書もしくは遺産分割協議書
〇移管先の証券口座(マイナンバーの提出あり)
相続手続きに必要な戸籍
※会社によっては『戸籍は取得して六ヵ月以内のもの』等条件がある場合がありますのでお気を付けください
相続人が(配偶者と)子供の場合
被相続人の出生から死亡までの戸籍
(配偶者と)子供の現在の戸籍(被相続人死亡後に取得した戸籍)
相続人が(配偶者と)親の場合
被相続人の出生から死亡までの戸籍
(配偶者と)親の現在の戸籍(被相続人死亡後に取得した戸籍)
相続人が(配偶者と)兄弟姉妹の場合
被相続人の出生から死亡までの戸籍
被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍
(配偶者と)兄弟姉妹の現在の戸籍(被相続人死亡後に取得した戸籍)
※被相続人が若いときは祖父母の戸籍を求められることもあります
※兄弟姉妹が死亡し甥姪が相続人となっている場合は兄弟姉妹で死亡している人の出生から死亡までの戸籍も必要です(婚姻前で両親と重複しているものは不要です)
※数次相続(兄弟姉妹が被相続人の後に死亡)が発生している場合は兄弟姉妹の配偶者も相続人となる場合がございますのでご注意ください。
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株式の相続手続き完了までの期間は?
一生に数度の株式の相続手続き、自分でやろうとするとかなりの時間と労力が必要となります。
通常3ヵ月から場合によっては1年以上かかることもございます。
被相続人の口座の調査
被相続人の自宅にて書類を探す必要があります。
ここできちんと探しておかないと相続漏れということになってしまいますのでご注意ください。
戸籍の取得
それぞれの本籍地の市町村役場にて戸籍の取得の必要があります。
遠方の場合は郵送にて取得可能ですが何を添付したらいいのか申請書をどうやって書いたいいのか、定額小為替をいくらいれたらいいのか想定よりも手間がかかる作業です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要と一言で申し上げましたが、弊所所員でも完全に一人で戸籍を読み解けるようになるまで数年かかりますので、初めて戸籍を集める方にはかなり難しい作業かと思います。戸籍謄本を金融機関などの提出先がたくさんある方には、法務局にて法定相続情報の作成をお勧めしております。
法定相続情報とは法定相続人が誰なのか1枚でわかる書類となり戸籍の代替としてほとんどの金融機関等で使用できる正式な書類となります。
証券会社にて残高証明書の請求
戸籍、実印、印鑑証明書等を持参して被相続人所有の株式数を調査します。
通常請求してから数週間後にご自宅に残高証明書が届きます。
遺産分割協議
法定相続人の間で誰がどの遺産を相続するのか話し合います。
一人でも内容に納得がいかないと遺産分割が成立しません。
どうしても話し合いが成立しない場合は家庭裁判所にて遺産分割の調停や審判手続をすることになります。(但し、調停や審判になると弁護士費用や時間もかなりかかるためあまりお勧めはしません。出来るだけ相続人間で話あいましょう)
相続人に未成年者がいる場合は特別代理人の選任申立手続が必要なケースもあります。相続人に行方不明者がいる場合は不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てる必要があり時間がかなりかかります。
遺産分割協議書の作成
もしご自身で作成する場合はインターネットや本を参考にして遺産分割協議書を作成することとなります。
ご自身で作成した遺産分割協議書が手続きに使用できるか確認するよう弊所でも依頼を受けることがあるのですが、訂正がゼロの方はまずおりませんので専門家に作成を依頼することをお勧めします。
新規口座開設の書類の取り寄せ記入申し込み
証券会社に連絡をし、新規口座に必要な書類を取り寄せ、記入し、証券会社の指定する書類を添付したうえで提出してください。数週間するとご自宅に口座開設のお知らせ等が届きます。
証券会社にて移管の申し込み
必要書類をすべて集めたうえで証券会社にて移管手続きをします。
書類に一つでも不備があると、不足書類の提出や証券会社書類の書き直しなど、再度出直しとなりますのでご注意ください。
株式の相続手続きで注意すべきポイント
☑ネット系証券会社の相続手続き漏れにご注意ください
☑株式には証券会社口座に移管されていない特別口座というものが存在します。
(単元未満株は特別口座で管理されていることがあります)その場合は株主名簿管理会社にて相続手続きの上相続人の証券会社口座へ移管するお手続きとなります。
☑期限の定められた書類がありますので取得日にご注意ください
☑相続税の申告期限は被相続人死亡日から10ヵ月です
通常相続税のかかる方はお手続き箇所が多い(資産の件数が多い)ためお時間がかかります。想定よりもあっという間に10ヵ月が過ぎてしまいますのでお早めにお手続きください。
☑移管後に売却し利益が出た場合確定申告の必要がある場合がございます。
☑配当金は会社ごとに定められた期末に配当されるため相続移管手続き完了後数か月後に振り込まれることがあります
証券会社ごとの手続きの特徴
郵送でお手続きが出来る会社、窓口のみで受け付ける会社、被相続人口座の支店のみで受け付ける会社等、証券会社によってお手続きの方法が変わりますので事前の調査が必要です。
認知能力に対してかなり厳しい証券会社が存在します。
遺言書での相続にて相続人が窓口で口座を開設しようとした際に、口座開設を断られたとう話も聞いています。
家族としては意思疎通もできるし問題ないと感じたようですが、証券会社としては株式の売買を理解し手続きができる能力を求めたようです。
特に遺産分割の場合は上記も踏まえて協議されたほうがいいかもしれません。このような場合には専門家にご相談なさることをお勧めいたします。
相続に関して、以下のようなことにお悩みではありませんか?
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